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2007年 07月 19日 ( 1 )

b0037682_16265737.jpg 本書はある意味奇書である。

 まずは、最初奇異に思ったのが奥付。評者の場合、いつ出版されたものかとか、著者略歴だとか、書き下ろしか否かとか、そういったものを最初で念頭に入れて読み始める癖がついているので、まずそこをチェックするのだが・・・著者略歴:漆原糾・矢倉俊太郎・・・え?久坂部羊じゃなかったけと見直す。あ、カバーはやっぱりそう・・・久坂部羊(くさかべよう):大阪府生まれ。大阪大学医学部卒業。医師。本書『廃用身』がデビュー作って書いてある。ん?漆原糾って人は、略歴に自死って書いてあって、矢倉俊太郎って人は本書出版のために出版社を替わっている・・・ってことは、この久坂部羊ってのは、矢倉って人が共著のためのペンネームを使ってのことなの???なんて思いながら読み始めた評者。

 次に奇異に思ったのが、まえがきの日付。「2002年 月 日 著者」って、これって何か間違い?なんで日付ないの?だから著者って誰?と思いながらも、やはりほっといて本編に入る評者。

 えっ!これってノンフィクションだったんだ!!!知らんかった!!!っていうか、なんも中身知らずに読み始めてはいるんだけどさ。ふむふむ。例えば、脳溢血とかで倒れて、体のある部分が動かなくなって、医学的にみて恢復の見込みがない場合、その部位を廃用身て呼ぶわけね、ふ~ん。さて、想像してみよう。評者が60歳のとき、いきなり脳溢血。幸いにも一命は取り留めたものの、両脚と左腕は不随になってしまう。いくらリハビリしても、廃用身なのだから何の意味もない。家族の介護がないと動けない。自分で車椅子も乗れない。多分、大震災でも遭遇したら、自分は逃げられないだろう。家族にも俺を置いて逃げろというだろう。というか、もう相当に自分の介護に疲れた家族は、何も言わなくとも逃げ出すかな?で、ここで医者である著者が紹介しているように、その廃用身を手術で切断したらどうだろう?鍛えれば移動できるようになるのか?残った右手と、下肢の残存部分を使って・・・。そういう、これまでは思いつかなかったような、廃用身切断という方法で患者や家族に喜ばれて、しかし世間にはその手法を断罪され続けてきた、医師の遺稿も、全体の半分で終わる。

 そして、この医師の遺稿の出版にあわせ、後半は、なるほど、共著のもう1人矢倉氏の文章が続く。なぜ、医師は自死に至ったのか。マスコミを騒がせた事件の真相とは。ふ~ん、そういう本なんだと思っていると・・・。

 奇書である。奥付に二つの、それも相容れない出版日付が記載されているのに気付かなければ・・・そこから普通の本の構成を想起しなかれば・・・。奇書は大袈裟かな(^.^)問題の書である。

 しかし、本書前半部分に書かれている老人虐待の実情は、満更大袈裟ではないだろう。評者のからだの三肢が不随になって、痴呆で家族を詰り、唾を飛ばし、狙ったように食べ物に糞尿を垂れれば、家族の対応もどうなることかわからない。今はまだ見ぬ孫に、“じいちゃん、早く死
ね!”とか言われ、竹刀みたいので叩かれたりするのかなあ?哀しいなあ。

 老人介護の赤裸々な現実とか、四肢切断の手術の描写とか、そういうのが元々好きじゃないという方にはお薦めしないが、そうでない方は、是非読むべし。知識系としても小説系としても。
by seiseninfo | 2007-07-19 16:06